バーを入れる手術(Nuss法一期的手術)|漏斗胸の治療なら松山笠置記念心臓血管病院

バーを入れる手術(Nuss法一期的手術)

筋層下ナス法による漏斗胸手術

漏斗胸手術 マーキング

いよいよ漏斗胸の手術日になりました。

朝食は抜いていただきます。

午前10時か、午後2時位から手術を行います。手術に先駆けてマーキングを胸に行います。

病室から手術室まで、歩いて移動していただきます。

手術台の上にあがっていただいて、気管内挿管全身麻酔をかけた後、いよいよ手術です。

まず漏斗胸患者の胸の両脇を2ヶ所、2.5cm切開します。

体軸に垂直に、皮膚切開をしているところです。身体の上に描いている線は、術前にバーを入れる部分や肋骨の位置を示すマーキングです。

肋骨の前面に筋層切開を行いました。

漏斗胸手術 筋層切開

皮切部から筋層を切って、肋骨まで切っているところです。白く見えるのが肋骨です。ふつうのナス法であれば、筋肉が見えたところで、胸腔鏡で見ながら作業用ポートでバーを通す道をつけた後、片方の穴から体内を通ってもう片方の穴にテープを通します。そのテープで誘導して、バーを差し込むわけですが、当院はまだ先に進みます。

皮膚の下(肋骨の上)をどんどん切開して、皮下組織、筋層を切開した後、肋間筋・肋骨・肋軟骨から大胸筋及び前鋸筋を剥離します。

左側もちょうど心臓の前面あたりで開胸します。

肋間筋を切除した後、心臓と胸骨の間にある脂肪組織である前胸部疎性結合組織を剥離します。

漏斗胸手術 バーを胸腔の中に入れる

その後、皮下脂肪の下の筋層を剥離した部分を通して、肋骨と肋骨の間にある肋間筋の剥離した部分を通って、バーを胸腔の中に入れます。肋間筋を切除しているので簡単にテープを通すことができます。

テープで弓形のバーを誘導して体内に通します。

バーは心臓の心膜の前と胸骨の間にある縦隔組織剥離部を通って反対側の胸腔内に出て、肋間を通って筋層下と皮膚を通って体外に出てきます。

小児の場合は胸郭は柔らかいので、バーを回わせば前胸壁の陥没は治せることが多いのですが、肋間筋が裂けてしまい呼吸機能に支障が出るようなケースもあります。

また大人の漏斗胸治療の場合は、前胸壁がとても固いので、ふつうのナス法でテコの原理でバーを180度回転させても、うまく改善しないことがしばしばあります。

そこで筋層下ナス法では、さらに上向きの力を加えてバーを持ち上げることで陥没を治すようにしています。そうすれば肋間筋が裂けることを防げ、狙った筋層下の位置にバーを通すことができるのです。

漏斗胸手術 エンジンジャッキ(クレーン)

強い力を加えるために、エンジンジャッキ(クレーン)を使います。これは当院独自の方法です。

笠置院長もこれまで様々な方法を試し、安全性を追求してきたのですが、2007年にエンジンジャッキ(クレーン)が使えることを発見しました。

エンジンジャッキを使うためには、ミリ単位の調節を行う工夫が必要ですが、微妙な位置のコントロールは電動式の手術台の位置を調整することによって行っています。

筋層下ナス法では、体内に通したバーを、前もって手術用に滅菌したパーツによってエンジンジャッキに接続し、その力で陥没している前胸部を持ち上げて上方向に引き上げます。その時、肋骨と肋軟骨は線状骨折を起こします。

骨折しても、骨膜はつながっているので、骨が離断するわけではありません。肋骨骨折は、骨折の中ではいちばん治りが早く、3週間で治るものです。バーも添え木代わりになって回復を助けます。

肋骨と肋軟骨が柔らかくなったところで、1本目のバーを抜きます。そのあと体内に残す2本目のバー(成形した後、滅菌しているもの)を入れて、体内で180度回転させます。

漏斗胸手術 メタルバー

バーは、笠置院長が患者さん一人ひとりの胸の形に合わせてアルミ棒で型をとり、成形しています。すべてオーダーメードなのです。

術者が自分で作っているので、ミリ単位で適合性を考えながら最適な手術を行うことができます。

また肋骨との調整を考えながらバーを置き丈夫な手術用の縫合糸で肋骨に縛ることで、バーが骨膜に当たって起きる術後の痛みを、かなり軽減できることが経験的にわかっています。

痛みを感じることがなければ、痛み止めを飲む必要がありません。そうした配慮も行っています。

左右それぞれ2本の肋骨に手術用縫合糸を用いてバーをしっかり固定します。

漏斗胸手術 バーを手術用ブレード縫合糸で肋骨2ヵ所に縛ります

バーを回転させた後、バー全体をずらしながらバーの端を傷口に持ってきて、筋肉を引っ張って筋層下に差し入れます。

そして今度は反対側にずらして、もう片方の傷口のところから筋層下に差し入れます。

バーの両端を大胸筋を剥離した後のポケットに収納してから、バーの左右の位置を調整した後、バーを手術用ブレード縫合糸で肋骨2ヵ所に縛ります。これでもうバーはずれません。

同じ傷口から、傷口を動かして皮膚と筋肉を持ち上げ、同じ要領で2本目のバーを入れて回転させます。

漏斗胸手術 ドレーン(排液管)を挿入して留置

筋層を縫合するときに、左右の胸腔内に1本ずつドレーン(排液管)を挿入して留置します。大人の場合は直径5mmの、子供の場合は直径3.5mmの、シリコン製のものです。

これは、漏斗胸の手術でバーを入れた後には肺がしぼんでいるため、ドレーンを入れて肺を拡張させます。

一般的に、肺を拡張させた後にドレーンを抜いてしまうドクターが多いようですが、筋層下ナス法では、組織を切ることもあるので、排液のために必ずドレーンを4日間くらい留置することにしています。

漏斗胸手術 縫合

筋層・皮下組織・皮膚をきれいに縫合します。筋層は一層に、皮下組織は三層に、皮膚は一層に、きれいに縫合します。溶けない細い糸で皮下に埋没させて縫うので、抜糸は行いません。

漏斗胸手術 絆創膏(ステリストリップ)

絆創膏(ステリストリップ)を貼って、筋層下ナス法による漏斗胸手術終了です。

術後の人工呼吸

術後の人工呼吸

術後に呼吸管理・疼痛管理のために、ASV(二相式気道陽圧ユニット)という機械を使って人工呼吸を行います。ちょっと息をすれば機械が肺に空気を送り込んでくれますので、自分の力で吸い込む努力をせずにすみ、かなり痛みが緩和され楽になります。

漏斗胸・胸郭変形の症状でお悩みの方はお問い合せください

このコーナーでは、このすぐれた漏斗胸治療法である筋層下ナス法について、受診のお問い合せから、実際の手術法、術前検査、患者側の準備、医師側の心づかい、筋層下ナス法のメリットまで、まとめて詳しくご説明しています。ご自身やご家族の漏斗胸の症状についてお悩みの方は、ぜひご一読ください。

疑問点などは、お問い合せフォームからご質問いただければ、なるべく早くお答え申し上げます。

すべての漏斗胸患者のみなさんが、一日も早くお悩みから解放されることを祈念しております。

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