漏斗胸の手術について|漏斗胸の治療なら松山笠置記念心臓血管病院

漏斗胸の手術について

筋層下Nuss法による漏斗胸手術のすべて

安全・確実な痛みの少ない漏斗胸治療です。

漏斗胸の手術法としてほぼ完成形のレベルです

松山笠置心臓血管病院

松山笠置心臓血管病院では、2000年からナス法による漏斗胸の治療を開始し、すでに1,000例以上を重ねてきました。

当院では胸部外科の知識と経験を発揮して、ナス法による漏斗胸手術を独自に改善し、「筋層下ナス法」とも呼べる術式を確立してまいりました。

この筋層下ナス法は、シンプルな手術法であり、大人の漏斗胸治療に適していること、また傷口の数を両脇の2つですませられること、男性の場合は乳輪近くを切開することによってほとんど傷口を見えなくすることもできることなど多くのメリットがあり、症例数も重ねてきたことから、漏斗胸の手術法としてほぼ完成形といってもよいレベルに達していると思います。

そこで当院の笠置 康院長は、当院で行っている筋層下ナス法手術について、日本胸部外科学会総会で発表を行いました。

このホームページでは、この学会発表に基づき、筋層下ナス法による漏斗胸治療のメリットと素晴らしさを、漏斗胸患者のみなさまにご紹介するために、わかりやすく解説しています。

1,900例+1,000例以上の「漏斗胸」手術実績

笠置院長「漏斗胸」手術実績

笠置院長は、東京の大学病院で勤務していた時に、1,900例もの漏斗胸手術をすでに経験していました。松山笠置心臓血管病院に戻ってきて、さらに100例ほど漏斗胸治療を行った1999年に、ナス法が保険適用されるようになったのです。

ナス法はアメリカでDr.Nussが開発した漏斗胸の手術法ですが、笠置院長は松山に戻る前の1988年頃、ノースカロライナ州のイーストカロライナ大学病院で胸部心臓血管外科医師として働いていた時に、胸部心臓血管外科の主任教授がたまたま隣の州に住んでいたナス博士から、スタートしたばかりのナス法の手術について聞いてきて、教えてもらったということもあり、日本では最も早くナス法の存在について知ることができました。

ナス法が論文になったのは1998年くらいですから、ずいぶん前の話です。

筋層下ナス法による漏斗胸手術の実績

ナス法の改善に、導入当初から取り組む

ナス法はそれまでの漏斗胸手術と比べれば、簡単

ナス法の特色はメタルバー(金属棒)を使って胸骨を持ち上げて陥没を治すことにありますが、それまでの漏斗胸手術はどうしていたかといいますと、陥没している部分の肋軟骨を切り取って短縮したり(ラビッチ法)、胸骨を全部取り外して反転させて取り付けたり(胸骨翻転術)、補助としてナス法よりも弱めのバーを胸部に入れて持ち上げるといった、かなり大掛かりなものでした。

笠置院長も東京女子医大時代に、和田主任教授(日本で初めて心臓移植手術を行った医師)のもとで胸骨飜転術による漏斗胸手術をたくさん行い、漏斗胸治療の新しい術式(胸肋挙上術)も開発していました。

笠置院長は自分で漏斗胸手術の論文を分析

当時、漏斗胸治療を熱心に行っていたのは、東京女子医大病院(胸部外科)、札幌医大病院、名古屋市立大学病院、金沢大学病院、天理よろず病院などでした。新たにナス法に取り組もうとしていた東京警察病院、国立岩国病院(後の川崎医大病院)、長浜赤十字病院、長野こども病院、東京女子医大病院(形成外科)、札幌医大病院と同時に、当院もナス法よる漏斗胸手術に取り組むことになりました。

最初の症例は10歳のお子さんでした。笠置院長以外の他の先生方は、アメリカのナス博士を訪ねて行って術法を勉強していましたが、ナス法には再発率や合併症が高いという問題点があることを考えると、笠置院長は自分で漏斗胸手術の論文を分析して、当初からナス法を改良する道を選んだのです。

安全・確実な漏斗胸手術「筋層下ナス法」を開発

「どうすればバーの位置異常を防げるのか?」、いろいろ考えた末にたどり着いたのが、「筋層下ナス法」でした。

安全・確実な漏斗胸手術「筋層下ナス法」を開発

ナス法では、大胸筋・前胸筋の筋肉の上の皮下(筋膜の上)にバーを入れています。

これでは、筋肉が動けばバーがずれるのは当然です。バーがずれると漏斗胸が元に戻ってしまいますし、筋肉が萎縮して圧迫壊死する可能性もあります。笠置院長は「筋膜にバーのずれを防ぐスタビライザー(安定装置)を結んだくらいでは、バーのずれは防ぎ切れないだろう」と考えたのです。

これに対して筋層下ナスでは、筋肉をすべて剥離して、その下にバーを入れた上で、肋骨に糸をかけて左右の肋骨それぞれ2ヵ所で縛ります。そうすればずれることは絶対にありません。

筋肉をきちんと剥離するにはテクニックが必要です。バーの上に筋肉が残ってしまうと、筋層下ナス法はうまくいきません。

笠置院長は以前より、ポーランド症候群という、大胸筋が先天的に欠損している病気の治療の際、背中の広背筋を大胸筋の位置に移植する手術をたくさん行っていました。このポーランド症候群の患者さんは、漏斗胸を併発しているケースが多いのです。そうした手術の経験を重ねて、筋肉剥離をきちんと行う手技を身に付けていました。

笠置院長の行う筋層下ナス法では、バーを入れた上に、筋層/皮下組織/皮膚をきちんと縫い合わせた五重構造になります。そのためバーが動くことなく、感染の可能性も減るので、とても安全です。

漏斗胸手術後に筋肉トレーニング運動を行うと、普通のナス法であればバーが入っているところの筋肉が萎縮していますが、筋層下ナス法であれば、ちゃんと筋肉が育ちます。

特に女児の場合は問題で、ナス法で筋肉の上にバーを入れてしまうと、成長すると乳房が歪んでしまう事例が学会発表されています。筋層下ナス法で治療すれば、そうしたことは避けられます。

全体を筋層下に納めるのでバーがずれない手術法

筋層下ナス法による漏斗胸手術の基本はこうです。

漏斗胸患者の胸の両脇を2ヵ所切開し、片方の穴から体内を通ってもう片方の穴にテープを通します。そのテープで誘導して、弓のような形のステンレス製のバーを体内に通します。

従来のナス法による漏斗胸手術であれば皮下にバーを入れるのですが、筋層下ナス法では皮下脂肪の下の筋層を剥離した部分を通して、肋骨と肋骨の間にある肋間筋の剥離した部分を通って、バーを筋層下の胸腔の中に入れます。

漏斗胸手術プロセス1

挙上用バーを体内に通した後、次に肋骨と肋軟骨の方向に引き上げます。

バーは心臓の心膜の前と胸骨の間にある縦隔組織を通って反対側(左側)の胸腔内に出て、肋間を通って筋層下と皮膚を通って体外に出てきます。

バーを体内に通した後、次に肋骨と肋軟骨の方向に引き上げます。その時、肋骨と肋軟骨は線状骨折を起こします。

骨折しても、骨膜はつながっているので、骨が離断するわけではありません。肋骨骨折は、骨折の中ではいちばん治りが早く、3週間で治るものです。バーも添え木代わりになって回復を助けます。

漏斗胸手術プロセス2

体内留置用バーを肋骨と肋軟骨の側に持ち上げ、体内で180度回します。

肋骨と肋軟骨が柔らかくなったところで、次に新しいバーを体内に入れます。これは体内に残しておくバーです。

そうしておいてさらにこのバーを肋骨と肋軟骨の側に持ち上げたうえで、体内で180度回します。

漏斗胸の小児の場合は胸郭は柔らかいので、バーを回せば前胸壁の陥没は治せることが多いのですが、大人の漏斗胸治療の場合は前胸壁がとても固いので、ふつうのナス法で、テコの原理でバーを180度回転させてもうまく改善しないことがあります。

そこで筋層下ナス法では、さらに上向きの力を術者が加えてバーを持ち上げることで陥没を治すようにしています。そうすれば肋間筋が裂けることを防げますし、筋層下の狙った位置にバーを通すことができるのです。

漏斗胸手術プロセス3

バーの端を傷口に持ってきて、筋肉を引っ張って筋層下に差し入れます。

筋層下ナス法による漏斗胸治療では、筋層下にバーを入れるので、バーの挿入方法も考えました。

力を加えて持ち上げながらバーを回転させた後、バー全体をずらしながらバーの端を傷口に持ってきて、筋肉を引っ張って筋層下に差し入れます。

そして今度は反対側にずらして、もう片方の傷口のところから筋層下に差し入れます。この後バーの左右の位置を調整して、バーを筋層下にぴったり納めるのです。バーの弓の両端部分は、筋層下に通してありますから、バー全体が筋層下に納まることになります。

漏斗胸手術プロセス4

バーを手術用ブレード縫合糸で左右の肋骨それぞれ2ヵ所に縛ります。

そうしておいてから、バーを手術用ブレード縫合糸で左右の肋骨それぞれ2ヵ所に縛ります。もうこれで、バーがずれることはありません。

漏斗胸 手術費用・支援制度など

漏斗胸手術は保険適用です。

18歳以上の方については「高額療養費制度」

18歳未満の方については自立支援医療(育成医療)という制度があります。

詳しくは、→手術費用・支援制度など をご覧ください。

治療[漏斗胸の治療方法・症例]

私(笠置 康)自身は手術:外科治療を行う症例しか扱っていません。軽度の症例(心臓及び肺に圧迫の無い症例)においては、手術をする必要は無いと思いますので、この場合は姿勢を正しくする様に指導しています。これを補助する方法としては、姿勢を正しくする為の姿勢矯正帯もあります。

手術

漏斗胸手術

漏斗胸は前胸部の陥凹により心臓及び肺の圧迫をきたす病気です。陥凹の程度がある程度以上であれば、外科治療した方が良いのです。

何故ならば、年齢が長ずるにつれて前胸部の陥凹を気にして内向的になったり、心臓・肺が圧迫されたりするからです。

胸骨翻転術

第1例は和田寿郎博士により1959年7月、11歳男児に施行されて以来、術後の呼吸管理も容易であり、矯正効果は良く、10年以上にわたる遠隔成績もきわめて満足すべきものであることから、世界的に普及をみるに至った方法であります。

肋骨挙上術

高度の非対称漏斗胸で、胸骨の変形あるいは位置異常の軽度のもの、及び一側性の傍胸骨性の深い変形が適応となります。

胸骨翻転術+肋骨挙上法+胸骨重畳法

胸骨自体が陥凹している非対称性漏斗胸に対しては、胸骨翻転術の際に翻転した漏斗胸胸壁を陥凹側にずらして固定することにより矯正されます。

しかしながら、陥凹側の胸郭前後径の増加は望めず、このような症例に肋骨重畳法を施行すれば外見上は修復される為、これらの三術式を同時に施行することにより殆どの問題を解決する事ができます。

胸郭再建術

松山に帰ってきてから、胸骨飜転術を行っている時にひっくり返してもそんなに変わらない事に気が付きました。この方法が胸骨飜転術と異なるのは、胸骨重畳法を行い、胸骨飜転術を翻転しないで行う方法です。

この方法により左右の肋骨の切除長が違う事が無く、スムースな胸骨飜転術の様な手術ができるようになりました。成人漏斗胸症例に対しての外科治療として多くの症例を治療してきました。

胸肋挙上術

比較的肋軟骨の軟らかい症例に適応があり、胸骨を付着肋軟骨から遊離し、挙上矯正位をとらせた上で過剰部分を切除する事で前胸壁の陥凹を改善する事ができます。

胸骨挙上術

この方法は以前より、Sjovall, Granier, Lester, Dailey, Adams, Ravitch, Bradt, Holmes, Grob, Daniel, Paltia, Sanger, Haller, Taylor, Robicsek, Rehbein, Fonkalsrud,Nuss らによって行われてきた方法であり、挙上された胸骨の位置を保持する数多くの変法が考えられ、しばしば用いられてきた術式であります。

しかしながら、再発の頻度が高いことから私は本術式を一度も用いた事はありません。ナス法はRavitch法の術後形態を保持するbarより考え出された術式です。

ナス法

ナス法は、米国ヴァージニア州ノーフォーク市のキングス病院小児外科医Dr.Nussにより開発され、1999年より我が国でも開始されました。当院では2000年よりNuss法を用いて、漏斗胸外科治療を行っています。

金属製のプレートを胸の陥凹部の側面より入れて陥凹部を挙上する術式です。手術は2~3cm前後の小さな手術創が両側胸部に残るぐらいで施行する事ができますので、手術自体のストレスは従来の方法に比較すると非常に少ないのです。但しこの方法は2回の手術を要します(金属プレートを外す手術をする為)。

漏斗胸・胸郭変形の症状でお悩みの方はお問い合せください

このコーナーでは、このすぐれた漏斗胸治療法である筋層下ナス法について、受診のお問い合せから、実際の手術法、術前検査、患者側の準備、医師側の心づかい、筋層下ナス法のメリットまで、まとめて詳しくご説明しています。ご自身やご家族の漏斗胸の症状についてお悩みの方は、ぜひご一読ください。

疑問点などは、お問い合せフォームからご質問いただければ、なるべく早くお答え申し上げます。

すべての漏斗胸患者のみなさんが、一日も早くお悩みから解放されることを祈念しております。

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