下肢静脈瘤について|漏斗胸の治療なら松山笠置記念心臓血管病院

【下肢静脈瘤】

下肢静脈瘤

(写真提供:ゼリア新薬工業株式会社)

はじめに

下肢静脈瘤はお産を経験した女性や男女を問わず立ち仕事の方で、静脈に圧力のかかる状態の方の足の静脈が盛り上がる事があります。この静脈瘤という病気に対しての説明・原因・治療方法について述べます。

典型的な下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤説明図

下肢静脈瘤とはどのような病気か、また治療方法としてはどの様な治療方法が有るのかについて本題に入ります。

下肢静脈瘤として典型的なものは調理師や理髪師、お産をした事のある女性で立ち仕事の方の足の静脈の一部分が青黒く皮下に怒張して盛り上がって見える病状です。

一般的には外見的な問題に訴えて来院する方が多いのですが、更に症状が進むと足の疲れ易さ、足から下腿にかけてのうっ血性皮膚炎を起こす事もあります。最終的にはこの部位に皮膚潰瘍を形成する場合も有ります。こうなると重症です。(右図)

下肢静脈瘤の原因

下肢静脈瘤の原因としては多くのものは皮下の浅い部位の静脈、即ち大伏在静脈(この静脈は冠動脈バイパス術に用いられる事もあります)や小伏在静脈の弁が壊れてしまってかなりの静脈圧(約100cmH2O)がこれら静脈に加わる事により静脈が怒張して出来るものがあります。

さらにこれらの静脈と筋肉の中を通る深部静脈とを繋ぐ交通枝静脈にある弁が壊れた場合にも圧が加わる事によりこれらの静脈が怒張します。これ以外の原因としては大腿静脈等の筋肉の中の深い所を走る静脈に血栓(血の塊)が出来て閉塞する事で、静脈血が皮下の浅い所を走る血管に逃げ込む為にこちらを通る血液が多くなり静脈が怒張し、下肢静脈瘤を形成する事があります。二次的な下肢静脈瘤がこれです(下図)。

また皮膚の本当に直ぐ下の毛細血管とも言える静脈が最大直径約2mmぐらいまで拡張する事に依って患者さまの下肢の外見を悪くしているものもあります。

下肢静脈瘤説明図

下肢静脈瘤の治療方法

治療方法は古来より様々な事が行われてきました。

例えば、漢方に於いて桂枝茯苓丸・冠元顆粒・血府逐於湯を服用すれば良くなるとか、ハーブによる治療ではマロニエ・アメリカマンサク・エビラハギが効くとか、病院長 笠置康が見たテレビ映画の『刑事コロンボ』では海水に静脈瘤の下肢を浸けるとか、また下肢静脈瘤に注射をする事で下肢静脈瘤を硬化させて治す方法も行われていました。どの治療方法も今一つであり、病院長 笠置康が医師になった当初は下肢静脈瘤に対する治療方法は弾性ストッキング若しくは外科治療のみであり、硬化療法は治療成績が不良な事から治療方法としては見放され、行われていない状況でありました。

しかし時代が変われば医学(科学)も変わるもので現在の下肢静脈瘤に対する治療方法としては、軽症例に対しては弾力ストッキング(強力な柔らかい繊維で下肢を締め上げるものです。)、中等症に対しては硬化療法(食道静脈瘤の硬化療法に用いる薬を下肢静脈瘤に使用する事により良好な結果を得られ、治療方法として復活したのです。)

更に重症例に於いては以前より行われていた外科的に大伏在静脈や小伏在静脈を結紮し抜去する事に加え、必要な個所に対して硬化療法を行う、硬化療法の簡便さと外科治療の確実さを組み合わせた治療方法が行われている様になりました。これら双方の利点を組み合わせたハイブリッド治療方法も行います。最近では新しい手術方法で膝下部分に手術創を残さず出来る様になりました。

硬化療法

下肢静脈瘤説明図

硬化療法は比較的軽症の下肢静脈瘤に対して行う方法です。

深部大腿静脈瘤が開存している事を確認した後、立位にして静脈瘤を怒張させ更に駆血帯(ゴムバンド)で静脈瘤を怒張・緊張させた後に瘤に翼状針(点滴の時に用いる翼付きの針で蓋が付いています。)を瘤の範囲に合わせて3~10か所刺します。静脈瘤が広範囲に及ぶ場合は何日かに分けて行います。

次いでゆっくりと姿勢を変えてあおむけにねて、先ほど針を刺した足を若干持ち上げたような姿勢をとります。そこから先ず静脈瘤の中に空気を注入し、血液を排除し硬化剤(ポリドカノール=エトキシスクレロール)を注入し、この後更に少量の空気を注入します。空気及び硬化剤の注入が終わったところでそれぞれの翼状針を抜いて、この部位に厚く折ったガーゼを当てて瘤を圧迫する様にします。ガーゼの上から瘤をきっちりと圧迫する為に足を弾力包帯で巻いて一日目は終了です。

翌日来院して頂き、弾力包帯を外しガーゼを取り除きその後一週間は弾性ストッキングを履いて頂きます。更に次の一週間も立ち仕事等をする時には弾性ストッキングを履いて頂き、これで出来上がりです。静脈瘤の範囲が広く、何度もしなければならない場合は日程を開けて同じ事をするのです。

両下肢に静脈瘤がある場合も両下肢一度にするのは両足とも包帯でグルグル巻きになる為、なかなか大変なので日にちを開けて硬化療法する事が殆どです。範囲が広い場合でも2~3回の硬化療法をすれば大丈夫です。普通の静脈瘤の硬化療法であればある程度その元を断つ事によって改善を得る事が出来るのですが、先に述べた皮膚の直下の静脈が青黒く最大2mmぐらいまで怒張する原因不明の静脈の怒張に対してはそうはいきません。

即ち、青黒く怒張した静脈を全て虱潰しに硬化療法をしていかなければなりませんので、刺青をするような感じで少しずつ治していきます。青黒く怒張した静脈は、非常に細かいので翼状針を刺すことが困難ですが根気よくやるわけです。この場合は6~7回以上も硬化療法をしなければならない事があります。

下肢静脈瘤治療の流れ

下肢静脈瘤 血管内レーザー治療

血管内レーザー

静脈の中にレーザー光を導く細い光ファイバーを挿入し、血管内に照射したレーザーの熱によって処置が必要な静脈を塞ぐ方法です。以前から標準的に行われている外科治療(結紮抜去術)は太ももの悪くなった静脈を手術で取り除きますが、血管内レーザー治療は中から静脈をふさいで血液を流れなくしてしまいます。

レーザー治療の利点は、従来のストリッピング手術では足のつけ根と膝の2ヵ所を切開しなければならないのに対し、レーザー治療では膝の内側に細い針を刺すだけで治療することができます。

メリット

  • 日帰り手術が可能です。その日に歩いて帰ることもできます。
  • 手術部位は傷跡が殆ど残らず目立ちません。
  • 術後の痛みや出血が少ない治療法です。

レーザー治療の価格

  3割負担 1割負担
片足 約90,000円※ 片足約35,000円
両足約50,000円
両足    90,000円※

※高額医療請求すれば

ELVeS(エルベス)レーザー

日本国内で初めて厚生労働省より承認された「下肢静脈瘤血管内レーザー装置」です。

ELVeSレーザーは下肢静脈瘤(一次性下肢静脈瘤)治療用レーザーとして、より身体に負担が少なく安全に手術が行え、世界中で年間10万例以上の患者さんに施行されています。

ELVeSによる血管内レーザー治療は、患者さんにやさしい治療法です。

当院でも開始し良好な結果を得ています。

外科治療

外科治療は比較的重症の静脈瘤で範囲が広く、また大伏在静脈や小伏在静脈の本管の著しく怒張している場合に行います。

大伏在静脈や小伏在静脈を特殊な機械(ストリッパー)にて引き抜いてしまう(抜去する)事で根本的な治療が出来ます。大伏在静脈や小伏在静脈の抜去のみで元を断つことが出来て、それ以外の部位の静脈瘤が改善する事が殆どですが、改善が得られない場合は外科治療に加えて術後に硬化療法を行う事があります。麻酔はディプリバンを用いた全身麻酔で行います。大伏在静脈の抜去方法は大腿下部に約1.5~2.0cmの皮膚切開を行い、そこから大伏在静脈を取り出し静脈切開してストリッパーを挿入して、太股とお腹の皺の所で皮膚を約1.5~2.5cm切開し、大伏在静脈が大腿静脈にそそぎ込む手前でストリッパーを静脈の外に出し、ストリッパーの先端にオリーブと呼ばれる弾頭の様な物を装着して一気に大伏在静脈を引き抜きます。

大伏在静脈の場合は最近では新しい手術方法で膝下部分に手術創を残さず出来る様になりました。小伏在静脈は足首の後外側の皮膚を約2cm切開し、小伏在静脈を取り出しこの部分を静脈切開してストリッパーを挿入して膝関節の後ろ部分の皮膚を2cm切開しここでストリッパーを静脈の外に出し、 先程と同様にオリーブを装着して小伏在静脈を抜去します。抜去の際、切開した皮膚は糸の結び目が内側になる様な特殊な縫い方をする為に手術後に抜糸をする必要がありません。

手術が終わった後は手術をした足を弾性包帯にて巻き上げ、取り去った静脈の部分に術後血腫(血の塊)が出来ない様に配慮します。当院では当初米国のように日帰り手術をしていましたが、日本人はアメリカ人とは違いやはり華奢なものですから、手術当日の夕方退院する時に患者さまが痛々しい感じでした。そこで最近では入院した当日の午後に手術をし一晩泊って翌日退院するコースにしています。手術の後の痛みも殆どなく、一日目には弾性包帯を取り除き弾性ストッキングに履き替えて、約2週間は弾性ストッキングを履いて頂きます。

最近は新しいベインストリッパーを用いて、鼡径部一箇所の切開で出来る大伏在静脈の新しいベインストリッパーを使っています。これにより手術創も少なく足に切開創が出ない為、術後素足にスカートで歩いても、殆ど手術痕が無い為、手術をしたかどうかも分からないほどです。

先程述べました様に外科治療は根本的治療方法ですから、元を断ってしまえばそれ以外の静脈瘤も消える場合が殆どですが、術後に残った場合にはこの部位に対してほんの僅かな硬化療法をすれば出来上がりです。

下肢静脈瘤説明図

終りに

下肢静脈瘤は当初患者さまが当院を訪れる時には外見上の問題を訴える方が殆どですが、硬化療法や外科治療の後で患者さまは足が軽くなったと喜ばれる場合が屡々あります。これは術前にはジワジワと悪くなった為に自分ではあまり症状を感じなかったのでしょうが、術後は治療により良くなったと実感するからなのでしょう。

早期であれば比較的簡単な硬化療法、また重症な症例に対しても一晩の入院で出来る外科治療を行う事で、下肢静脈瘤で悩んだ足はすっかり生まれ変わる事が出来ます。比較的多い病気です。まずはお気軽に当院にご相談ください。

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