
1 術後にバーがずれることがない

筋層下ナス法では、バーを直接、左右の肋骨2箇所に糸を付けてしっかり固定するので、バーの位置異常が起きません。当院では1,000例以上の漏斗胸手術を行っていますが、バーのズレは1件も起きていません。
また、筋層下ナス法では、一般的なナス法で使用されるスタビライザー(安定器)を使用しません。スタビライザーをつけると、胸がそこだけぽっこりふくれてしまうので、特に身体の小さいお子さんなど、見栄えが良くありません。
2 筋層の壊死が起きない
一般的なナス法では、バーを筋層の上に置くので、筋層が圧迫されて壊死が起きることがあります。
また女児の場合、皮下組織が牽引されて乳房発育不全が起きることがあります。これは女の子としては避けたいことです。筋層下ナス法では、バーを筋層の下に通すので、そうした心配はありません。
3 手術時間が短い

筋層下ナス法の漏斗胸手術そのものは約2時間、麻酔をかけるのに1時間、覚醒するのに1時間で、だいたい4時間で手術が終ります。
一部の形成外科で行われている胸膜外ナス法では6時間というケースもあり、筋層下ナス法は比較的短い手術時間ですみます。
4 筋肉トレーニングができる

皮下にバーを入れる一般的なナス法では、筋肉が萎縮してしまいますが、筋層下ナス法では筋層下にバーを入れるので、スポーツをしている人ならバーを入れた6ヶ月後から筋肉トレーニングをすることもできます。バーを取り出す二期的手術をするまでの2年間に前胸部の筋肉が増えている人もいるくらいです。
5 3本までのバーをひとつの切開創から入れることができる
一般的なナス法では、バーを3本入れる場合は、左右でそれぞれ3ヵ所切開する必要がありますが、筋層下ナス法では筋層を剥離する範囲を広げることで、3本までのバーを、左右それぞれひとつの切開創から入れることができます。
6 乳輪切開をすれば傷口が目立たない
男性であれば、症状によっては乳輪のそば(皮膚と乳輪粘膜組織の境目)を切開することで、傷口をかなり目立たなくすることも可能です。
筋肉が厚い部分なので、これは皮下にバーを入れる一般的なナス法では筋肉が壊死してしまう恐れがあり、できないことです。
7 手技自体の死亡リスクがゼロ

筋層下ナス法の手技自体の死亡リスクはゼロです。
これに対して一般的なナス法では、前胸壁と心膜を剥離する際に胸腔鏡を見ながら電気メスで剥離するわけですが、以前手術中に心臓を損傷したケースがあったため、手術の前に心臓の損傷に対するリスクの説明を必ず受けることになります。
これに対して筋層下ナス法では、前胸壁と心膜を術者が指先で敏感に感じながら剥離(鈍的剥離)していくため、とても安全に剥離することができます。
当院では、心損傷のリスクは必要がないのでご説明していません。
ただし麻酔の危険性だけは、どちらの漏斗胸手術でも1回目3~4000分の1、バー抜去時10,000分の1あります。
8 他の漏斗胸治療で再手術が必要になった場合でもリカバー可
一般的なナス法や、それ以前のラビッチ法で漏斗胸を治療して、結果としてうまくいかなくて再手術が必要になった場合でも、もういちど一般的なナス法を行うのは難しいでしょうが、筋層下ナス法であれば問題なく対応可能です。当院ではそうした再手術をすでに44例行っています。反対に当院でナス法による漏斗胸手術を行った患者さんで再手術しなければならなくなった症例はありません。
もし漏斗胸の再手術が必要なケースでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
9 大人の漏斗胸手術に最適な方法です

大人は子供に比べて、前胸壁が硬いので、一般的なナス法では胸骨の中心部を切開して、両側の肋軟骨が胸骨に付着する部位の、肋軟骨切離を行うことも少なくありません。そうすると傷口がたくさんできてしまいます。ナス法は、傷口が少なくてすむのが大きなメリットなのに、傷口が増えてしまっては元も子もありません。
筋層下ナス法であれば、硬くなった成人の前胸壁を柔らかくするのに.切開を行う必要はありません。大きな力を加えてバーを上に持ち上げますから、安全確実に前胸壁の陥没を治せるのです。
10 筋層下ナス法は、安全性・確実性が極めて高い漏斗胸治療です

筋層下ナス法では、肋間筋を少し切った瞬間に、胸壁と心臓の位置と動きを、術者が目視で確認できます。
その時に、前胸壁を持ち上げる時にどのくらい持ち上げるべきか、何に注意しなければならないかをしっかり把握できます。その結果として、「バーを持ち上げながら回転させる方法がベスト」だということもわかってきました。バーには幅がありますから、その幅の分を計算して持ち上げながら回転させなければ肋間筋が裂けたり、肺を圧迫することもあり、危ないのです。目視しているからこそ注意できることで、これができるのは筋層下ナス法の大きな利点です。
胸骨の挙上についても、バーを回転させた後に術者が目視でどれくらいの挙上が得られたかをその場で確かめ、不十分な場合は修正できますから、漏斗胸の改善が不十分であったというケースはこれまでありません。
また術後に胸水が溜まることを恐れる医師もいるようですが、ドレーン(排液管)を筋層下と胸腔内に留置しておけば胸水は排出されるのでまったく問題ありません。これは胸部外科的な措置として万全な措置と言えるでしょう。
漏斗胸・胸郭変形の症状でお悩みの方はお問い合せください
このコーナーでは、このすぐれた漏斗胸治療法である筋層下ナス法について、受診のお問い合せから、実際の手術法、術前検査、患者側の準備、医師側の心づかい、筋層下ナス法のメリットまで、まとめて詳しくご説明しています。ご自身やご家族の漏斗胸の症状についてお悩みの方は、ぜひご一読ください。
疑問点などは、お問い合せフォームからご質問いただければ、なるべく早くお答え申し上げます。
すべての漏斗胸患者のみなさんが、一日も早くお悩みから解放されることを祈念しております。